「カリガリ博士」、今の感覚でも十分に奇妙なこの映画を、当時の人はどんな風に受け取ったのか知りたいと思っていたので、ちょうどピッタリの本だった。
映画熱が高じて自ら映画製作に乗り出した谷崎純一郎、流行作家の大泉黒石と溝口健二が組んで作った「血と霊」、そして衣笠貞之助が横光利一や川端康成の力も借りて監督した「狂った一頁」についてそれぞれ論じる。
四方田さんがあの「ナオミ」のモデルだった小林せいさんを訪問するところから引き込まれてしまった。葉山三千子名義で女優をしていたせいさんの写真の日本人離れした美しさ!
ロシア人の外交官と日本女性との間に生まれた大泉黒石は初めて聞く名前でしたが、なんと俳優の大泉晃の父親だった!
唯一現存する「狂った一頁」をYouTubeで観てみた。多重露出や鏡で画面を歪ませてみせたり。前衛に果敢に挑戦していて今観ても面白かった。
宇野亞喜良さんの表紙がカッコいい!